東京ほくと医療生協 第3次中期計画(案) 〈2020年度~2024年度〉ダイジェスト版
1.はじめに
 超高齢化社会、貧困と格差の拡大する中で、「誰もが安心して住み続けられる」地域づくりが求められます。今後の5年間、生協の活動が前進できるように知恵と力を出し合いましょう。
2.第2次中期計画(2015年度~2019年度)の特徴
 健康づくり、居場所・食堂・サークルや助け合いなど、生協の多彩な活動がすすみました。新しい「ささえあいシート」のとりくみもはじまりました。社会福祉協議会、地域包括支援センターと連携が生まれています。病院では在宅を支援する地域包括ケア病棟、無料低額診療にとりくみました。医師のミッション・ビジョンでめざすものを明らかにしてきました。経営課題では経常赤字が続きましたが、18年度には5年ぶりに当期利益を出すことができました。医療・介護の職員体制が厳しく、 赤羽東診療所の閉鎖や介護分野の事業再編がありました。老健はなみずきを閉鎖しました。
3.情勢
 ①日本の人口は減少、超高齢少子社会、2025年には65歳以上の高齢者が約5人に1人に。住み慣れた地域で暮らし続けられる社会が求められます。
 ②病床削減、保険給付の見直し、利用者の負担増と、公的負担の削減、社会保障制度が解体されようとしています。
 ③外国人労働者が増える今後、共生社会の実現が求められます。
 ④国連の持続可能な開発目標(SDGs)は民医連・医療生協がとりくんできた課題です。わたしたちの存在意義がますます大きくなっています。
 ⑤気候変動、核兵器廃絶などが世界的な課題になっています。
4.東京ほくと医療生協のミッション・ビジョン
 <ミッション>
 いのちと人権を守り、地域のひとびとと協同して健康なまちづくりにとりくみます
 <ビジョン>
 〇誰一人取り残さない社会をめざし、居場所づくり・1支部1サロン・各事業所に相談窓口をつくろう
 〇人生の主治医・地域の生活支援者として質の高い医療・介護を提供する
 〇事業活動の継続のために必要な利益目標を達成できる経営をつくる
 〇HPH・SDHの視点をもった職員・組合員に成長する
 〇一人ひとりの多様性を認め合う、働きやすい職場をつくる
5.第3次中期計画の課題と目標
 1)地域まるごと健康づくり
 (1) 健康なまちづくり
 「地域まるごと健康づくり」を念頭に、居場所づくりや地域に出て行く活動を進めます。多種多様な健康づくりを、多世代でとりくみます。
 (2) HPH活動
 「いるだけで健康になる職場づくり」「外来、入院のすべての患者の健康増進」「生協の枠を超えた地域全体の健康増進」にとりくんでいきます。すべての事業所でHPH加盟をめざします。
 (3) たすけあい、サロン活動
 超高齢社会、人口減少のもたらす変化に向き合い、多様な人々が共生し、くらしを支えあうとりくみをします。「ささえあいシート」の活用をさらに広げ、困りごともみんなで考え、助けあうまちづくりをめざします。子育て世代の支援をすすめます。生協間の協力を前進させ、地域の人びととまちづくりにとりくみます。
 (4) 平和、社会保障の充実、多様性を受け入れる社会
 日本国憲法を守り、誰一人取り残されない社会、核兵器の廃絶と安心の社会保障の実現をめざし、幅広い人々と連携して運動をすすめます。多様性が尊重され、男性も女性も多様な性をもつ人々も差別なく自分の能力を発揮できるジェンダー平等社会の実現に貢献します。
 (5) 防災、環境問題
 大規模な自然災害が急増、首都直下地震も予想されています。生協の強みを生かし、防災・減災プログラムを組合員へ普及します。地球温暖化ストップの運動を、若い未来の世代とともにすすめます。
 2)質の高い、親切で安心な医療介護サービスの提供
 (1) 多職種共同の取り組み
 法人外事業所や行政と連携し、困ったときに頼りになる事業所、法人をめざします。患者、家族、地域の皆さんが安心して過ごすために機能する地域包括ケアのチームの一員として、総合力の向上に努めます。
 (2) 在宅医療、介護分野の強化
 住み慣れた地域で自分らしく過ごせるよう、24時間・365日の対応をすすめます。療養の場が在宅→入院→在宅と変わる過程で、ほくとの医療・介護サービスが連携して質の高い継続したケアを提供します。
 (ⅰ)訪問診療
 法人外事業所から相談しやすく迅速に対応してもらえる、また一緒に働きたいと思ってもらえるような、選ばれる医療機関になります。
 (ⅱ)訪問歯科診療
 地域の患者さんの要求に応え、お口の健康管理を行います。多職種と連携し情報を共有していきながら、訪問歯科としての役割を担います。
 (ⅲ)訪問看護
 関係職種と協力し一人ひとりに必要な支援を行います。在宅で病気や障がいに応じた看護を行い、健康状態の改善に向けて支援します。多職種の連携を図り、様々な角度からQOLの維持・向上できるケアを行います。
 (ⅳ)介護をめぐる現状と課題
 制度発足から20年経った今、まさに「保険あって介護なし」の事態です。担い手不足、保険財政の圧迫で、介護保険が持続の危機に直面しています。また、経営も厳しくなっています。情勢と向き合い、ほくとの介護事業の今後を検討していきます。
 (ⅴ)訪問介護、居宅介護支援事業所
 <訪問介護>
 人材確保と教育制度の確立に向けて、教育計画・学習会を行います。ニーズが高い障害サービスに対応するため力量アップを図ります。経営改善をすすめます。
 <居宅介護支援事業所>
 医療と連携を図り、その人らしい在宅生活が送れることを目標に支援します。ケアマネが中核として役割を発揮できるように教育体制の充実を図ります。また、病棟機能を生かした利用ができる仕組みを作ります。
 (3)各分野の目標
 ①病棟医療・・差額ベッド代を取らない入院機能は、ますます重要です。生活背景が複雑困難な患者さんへの対応力を高め、困っている人の最後の砦として役割を果たします。医療・介護のハブとなる生活支援型の医療・ケアを提供する中核機関をめざします。一般急性期、地域包括ケア、回復期リハビリテーション、緩和ケアの各機能の特徴を生かします。
 ②外来診療・・赤ちゃんからお年寄りまでかかりつけ医として末永く(継続性)、家族まるごと診療を担当します。気軽にかかることができ(近接性)、どんなことでも受け止め相談に乗ります(包括性)。地域全体の健康に責任を持ち、地域の健康問題にもとりくみます。特徴ある外来診療、ものわすれ外来、虚弱高齢者への対応、女性外来などを課題とします。
 ③歯科・・組合員・地域の患者さんの「お口の健康を守る」ために、う蝕・歯周病等の重症化予防と継続的管理を行います。また、口腔機能低下の早期発見、早期介入により口腔機能低下の予防と回復をめざします。オーラルフレイルを啓蒙し、全身状態を把握、生活習慣の改善の動機づけや支援のために医科・介護と連携を強めます。
 ④透析・・安心・安全の透析医療を追求します。患者アメニティの改善、患者送迎の拡大を検討します。スタッフの体制・学習教育を強化します。夜間透析の拡大を検討していきます。
 ⑤通所リハビリ・デイサービス・グループホーム・・各利用者さんの目標を共有し、個別性を考慮したケアを提供します。通所系サービスの中での通所リハビリとデイサービスの役割を明確にし、地域に発信しニーズに応えていきます。
 ⑥保健予防・・健診を受けやすくするために、自治体への働きかけ、事業所でのネット予約にとりくみます。がんの新たな検診が開発され一般化する可能性があり、対応を検討します。
 (4)倫理的な視点
 倫理委員会では「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」 に基づき、研究が適切に行われているかを審議します。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスガイドライン」 に基づき指針を作り、倫理的な課題において助言をしています。
 3)働きやすい職場づくりと人材育成・後継者確保
 (1)職場づくり
 (ⅰ)地域に視点をおいて活動する職場
 すべての事業所のHPH加盟をめざして学習をすすめ、事業所内、法人内外での多職種連携を強化し地域活動へ参加します。
 (ⅱ)健康で安心して働ける環境
 【ハラスメント・ゼロ】
 ハラスメント防止宣言・ガイドラインを各職場に周知し、ハラスメントのない職場をつくります。
 【ライフイベント対応】
 ワークライフ検討委員会の設置をめざします。妊活や子育て・介護の支援などの検討を始めます。
 【人員確保と残業削減、有給休暇の保障】
 業務の効率化、見直しをすることで残業削減にとりくみます。職場の人員体制確保につとめます。
 【多様性を認め合う職場】
 民医連綱領の実践として、多様性を認め合える働きやすい環境をつくります。
 (2)職員研修
 東京ほくとがめざす職員像
 ①民医連綱領や医療生協理念と「いのちの章典」を理解し、実践できる職員
 ②患者・利用者の人権を守り、無差別・平等と多様性を認め合う職員
 ③新しい知識や技術の習得に努め、質の高い医療・介護を提供できる職員
 ④「いのちの平等」実現のために育ちあえる職場づくりをめざす職員
 ⑤組合員、および広範な人々と共同し、SDHの視点で地域の健康づくりにとりくめる職員
 (3)後継者の確保と育成
 地域の健康を守り医療・介護を担うため、人材の確保と育成を重要課題としてとりくみます。とりわけ経営の視点からも医師・看護師、介護人材の確保と育成の方針を具体化します。(各職種の課題は略)
 4)経営目標(中期経営計画)
 (1)5ヶ年の主な資金支出
 設備投資:①電子カルテ更新1億円 ②医療機器・設備6千万円(年)、合計3億円
 リース支払:5千万円(年)合計 2億5千万円
 返 済:①金融機関 5億6千万円 ②組合債 4億7千万円
 (2) 中期経営計画の意義
 予算管理、部門別損益管理、月中管理、管理会計帳票の見える化、統一会計推進士の育成をすすめます。
 5か年計画の目標
 (ⅰ)事業キャッシュ目標は320百万円/年平均
 (ⅱ)資金残高は月商倍率1.0の確保
 (ⅲ)純資産で債務超過を回避する
 (ⅳ)生協北診療所の建替えを成功させる
 投資資金を銀行などから調達せず、土地の売却益で建設することを基本とします。
 (ⅴ)経営改善を進める中で、労働条件の改善をめざす
 (ⅵ)経営マネジメントの質を向上させて経営改善をすすめる
 5)生協の拡大強化
 生協の活動は、地域の福祉力を高める重要な役割を果たしています。特に若い世代にむけたとりくみが求められています。既存の活動を大切にしながら経験にとらわれない柔軟な発想で、大胆に挑戦をしていきましょう。
 (1)組織目標(年間)
| 仲間ふやし | 1,500人 | 出資金 | 1億5,000万円 | 
| 班づくり | 55班 | 担い手増やし | 150人 | 
(2)運営強化課題
 1)様々な団体とつながり交流をはかり、多世代にわたる新しい仲間を増やします。
 2)世代ごとの課題と方針を明確にし、専門委員会、地運、支部で進めます。
 3)憲法を守り、社会保障改悪を許さない運動と、ジェンダー平等、環境問題に取り組みます。





