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【医療と介護の現場】「最期を看る」覚悟を家族ととともに

2018/01/17 東京ほくと

 多発性脳梗塞や認知症から誤嚥性肺炎を繰り返している90代の男性A氏。夏に再度荒川区内の病院に緊急入院。肺炎はかなり重症、経口摂取はもう困難であると医師が判断、病院として治療は終了したため、これから在宅退院か転院かという選択を迫られました。
 娘さんの介護力を知らない病院のケースワーカーは、お小水の管の管理や吸引・点滴の処置があり肺炎も改善はしていないため「在宅退院は無理」の一点張りでした。娘さんは、A氏が苦しむ姿は見たくないという不安はありましたが、最期まで家で看たいという気持ちが強くありました。退院前カンファレンスの際、ご家族もいる中「本当に死ぬためだけに家に帰るようなものですから。転院しなくて本当に良いですか」という心ないケースワーカーの言葉が印象的でした。ケースワーカーが決める事ではないはずです。
 在宅退院に決まり、もとより吸引も点滴も問題なく実施出来る娘さん、入院中の不満やA氏の症状の変化に伴う不安の傾聴に努め関わりました。退院後23日間苦しむことなど全くなく穏やかに過ごされ、父親としてご家族の覚悟を決める準備期間を充分に作り、娘さんが気が付かないほど静かに息をひきとりました。
 在宅で亡くなる方はまだまだ日本では少なく、ほとんどが病院か施設です。条件が揃うのであれば、覚悟は揺らいで構いません。過ごしたい場所で最期まで生きる事を、訪問看護師として支えていきたいと思い、日々奮闘しています。

 (虹の訪問看護ステーション所長・羽田野 梢)