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病気の話 長く続く咳に要注意!結核の話

2017/03/08 東京ほくと

王子生協病院・呼吸器内科
医師 高浪 巌

長く続く咳に要注意!結核の話

東京都下、清瀬はかつては結核病院が多数ありました。多くの患者がこの町で結核治療を受け、清瀬は結核治療の町でした。写真はかつての国立療養所清瀬病院跡を示す記念碑です

東京都下、清瀬はかつては結核病院が多数ありました。多くの患者がこの町で結核治療を受け、清瀬は結核治療の町でした。写真はかつての国立療養所清瀬病院跡を示す記念碑です

 肺結核の発見が遅れ会社、学校、病院、老人施設で集団感染したというニュースに接することがよくあります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
 肺結核の流行は明治の産業革命と共に始まりました。明治・大正・昭和20年代までわが国では結核は手のつけられないほど、大流行し、人に感染する怖い病気でした。有効な治療法もなく、無念のうちに死んでも「不治の病だから仕方の無いこと」と考えられていました。そして当時の子どもたちは結核患者のいる家の前を通るときは、口に手を当てて息もせず、走ってその家の周辺の空気さえ吸わないように結核罹患を恐れていました。

過去の病気ではない

 昭和30年代以降、国の結核対策の取り組み、治療法の発展、経済の進歩に伴う栄養状態の改善等により結核罹患者は急激に減少しました。結核療養所、大きな病院の結核病棟、町の結核病院もその役割を果たし閉鎖され、結核に従事していた大多数の医療関係者も仕事を失い、どこかに消えていきました。医大での呼吸器の講義においても、結核は教えられる範囲も少なくなりました。どんな医療関係者も結核を学ぶ機会は少なくなりました。結核はいつしか忘れさられ、結核は過去の病気と思われています。しかし現在でも結核患者は昭和20年代の100分の1にまで減少していますが、完全になくなったわけではありません。すべての人が結核に感染する可能性があります。

症状

 肺結核の症状は咳や痰、微熱、寝汗などがありますが、特に長く継続する咳がみられるときは肺結核の可能性も考慮する必要性はあります。肺結核の発見が遅れると集団感染に至ることがあります。これとは別に、結核というだけで、人にうつす危険な状態と誤解し、常識を逸脱した過剰な反応をする人もいます。
 肺結核の集団感染や結核の過剰反応などはいずれも、社会全体の結核知識の欠落、結核を診ることができる医師の著明な減少等が背景にあるものと思われます。
 しかし、肺結核の集団感染が散発的にみられても、世界と比べて、日本の衛生状態は悪くないので、肺結核が再び日本で大流行することはないものと考えられています。