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HPVワクチンでがん予防
~対象者は無料で接種~

2021/06/16 東京ほくと
王子生協病院 小児科から

王子生協病院小児科医 平山 美香

定期接種の一つに、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンがあることをご存じでしょうか。女の子の保護者としては気になるワクチンだと思います。

このワクチンは2006年に欧米で作られました。その後、日本でもワクチンとして承認され、1999年度生まれの女性の70%近くは接種していました。ところが2013年に重い副反応の可能性をメディアが大きく取り上げた結果、2001年度以降に生まれた女性の接種率は、ほぼ0%になっています。
しかしながら、現在も多くの先進国で接種されており、子宮頚がんの予防にとても高い効果があります。HPVは中咽頭や陰茎などのがんの発症にも関係しており、多くの男性にも接種している国もあります。
世界中の数多くの研究によって「HPVワクチンの接種が特別に重い副反応を引き起こすわけではない」ということが分かっています。日本でも、日本産婦人科学会やHPVワクチンに関連するいくつもの学会が「HPVワクチンと接種後の様々な症状の間に因果関係が認められていない」ことを理由に、HPVワクチンの接種を勧めています。

国立がん研究センターの2020年がん統計予測を見ると、子宮がんは女性の罹患数予測では5番目、死亡数予測でも8番目に多いがんとなります。子宮がんの中でも子宮の入口付近にできるがんが子宮頸がんです。日本では毎年、約1万人の女性がかかり、約2800人の女性が死亡しています。20~30歳代の患者さんが増えており、30歳代までにがんの治療で子宮を失い妊娠できなくなってしまう人も毎年、約1200人います。
子宮頚がんの95%以上はHPV感染が原因です。子宮頚部に感染すると一部の人が持続感染し、がんを発症します。性交渉の経験がある女性のうち50~80%は生涯に一度はHPVに感染していると推計されています。

発がん性HPVの中でも特にHPV16、18型は、日本の子宮頚がんの原因として65.4%と多くをしめています。日本で定期接種として認められている2価、4価ワクチンにはHPV16/18型を含んでいます。
対象年齢の女子は、原則として公費助成があり無料で接種できます。初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的なので、定期接種の対象年齢は小学校6年~高校1年相当となっています。また、産婦人科診療ガイドラインでは45歳までの女性、特に26歳までの女性にも推奨されています。
海外ではすでに9価ワクチンが公費接種されていますが、日本でも自費で接種できるようになりました。もっと詳しく知りたい方は「みんパピ!」のホームページをご覧下さい。